北海道洞爺湖サミットが先ほど閉幕した。
サミットのメインテーマは、原油高、食糧高問題を差し置いて、地球温暖化対策であったが、「2050年までの温室効果ガス排出量半減」という世界全体の長期目標について、「すべての国との共有を求める」と宣言し、国連交渉での採択を求めた。
すなわち、目標の「共有」だけで閉幕した訳である。
環境問題の目標共有のために、600億円(!)もの税金がサミット開催のために拠出されたのも憤慨ものだが、CO2が本当の原因か証明されていない(というより、CO2は温暖化の原因でない可能性は高い)環境問題を話し合うよりも先に、解決しなければならないのは経済問題である。
これだけの税金を使うのであれば、今回のサミットのテーマとして真剣に「金融恐慌対策」を打ち出してもらいたかった。
サミットの公の場で、現在の金融市場で何が起きようとしているか、どんな恐慌が訪れるかを公表できない事情はよくわかる。公表すれば、それがパニックを引きおこすであろう。恐らく、会議の裏側では非公式に経済対策が何度も打ち合わせされたと思う。
サブプライム問題の本質
サブプライムとは信用力の低い低所得者向けのローンである。元来返済能力のない人々に銀行は次々に融資をした。
なぜなら、住宅価格が上昇しており、返済できなくても物件を差し押さえれば元が取れるのに加えて、サブプライムローンを証券化して、デフォルトリスクを他社に販売できたからである。銀行にとっては、リスクがない儲け話だったのである。
ところが、住宅価格が下落を開始し、サブプライムローンはデフォルトが起こし始めると、証券化された商品も次々とデフォルトに陥った。
この「証券化」という行為は金融工学から生み出された、いわば、「ババ引きゲーム」商品である。サブプライムというデフォルト率が高い債券に別の債券を組み合わせ、新たに債券商品化する。
その際に信用格付機関が、事もあろうか、金融工学の不可思議な計算式の元、AAAなどの高い格付に変えてしまい、これをモノラインと呼ばれる金融保障会社が保障する形での優良商品に再生し、それを金融機関や証券会社、ヘッジファンドに販売しまくったのである。
今、債券商品の市場は、上記仕組みの商品であるCDO(Collateralized Debt Obligation:債務担保証券)が中心になっており、その規模は何と50兆ドル(5,500兆円!!)にも膨れ上がっている。
サブプライムローンがすべてデフォルトになったとしても、高々2,000億ドル(20兆円)程度の破綻にすぎない。ローンを借りた低所得者が家を失い、2、3の銀行が破綻するかもしれないが、これぐらいでは金融恐慌などになりはしない。
怖いのは、サブプライムのデフォルトが引き起こすことが引き金になって、CDO中心の5500兆円規模の債券市場がデフォルトというパニックに陥ることである。
サブプライムローンの問題は、今や5,500兆円の債券市場のデフォルトという問題になりつつあるのである。ちなみに、全世界の株式市場の時価総額は7,000兆円。5,500兆円の金融市場の大きさは、実経済市場に匹敵する規模に膨れ上がっている。
債券市場がデフォルトに陥れば、全世界の金融機関の大部分が倒産するであろう。なぜなら、このババ引きゲームに参加してない金融機関はほとんど存在しないからである。
サブプライムの問題の本質とはこういうことなのである。単に低所得者がローンが返せなくなって可愛そうということではない大変な事態なのである。
これは、90年の日本のバブル崩壊に似ているが、違うのは、証券化という金融工学の粋を極めたその手法にある。この金融工学は元手の資本の何百倍というレバレッジをかけることができるため、被害も何百倍に膨れ上がる仕組みなのである。
日本のバブル崩壊は日本だけの問題であったが、今回のサブプライムバブルの崩壊は、日本のそれとはレベルが違う。今度は米国から全世界的に波及して、世界的な金融恐慌に発展しつつある。
世界恐慌への道
今年3月に米大手証券会社のベアー・スタンズが破綻したが、FRBはJPモルガンチェース銀行を経由して、300億ドル(3兆円)の公的支援を実施した。大手銀行ではなく、全米5位の証券会社1社を国が救済したのだ。
救済するのには理由があった。なぜなら、ベアー・スタンズはCDO、債券市場で全米No.1の残高を持っているからである。これが破綻すると5,500兆円の債券市場はパニックになる。そのためFRBのバーナンキ議長は、異例と思える支援を行った。
しかし時既に遅しの感がある。
バーナンキはサブプライム問題を見誤った。2007年時点では、1,000億ドル(10兆円)の損失程度にしか考えていなかった。2007年中にCDO市場への公的資金投入などの何らかの手立てを施せば、まだ軽症で終ってたかもしれない。
このCDOという商品は、その商品生成過程において、あらゆる金融機関が複雑にからみあってるため、何が破綻すれば、どこの金融機関が破綻するか、もはや誰にもわからなくなっている。
今となってはベアー・スタンズだけでなく、シティバンクは破産寸前であるし、モノライン大手のアムバックとレーディアンは株式売買停止状態。米金融機関の破綻はこれからも後を絶たないであろう。
バーナンキは今に至って、元々米国が打ち出した、時価総額基準の見直しを言い出している。今時価総額による資産評価をされたら、米国の金融機関の大部分が破綻すると、FRB議長自らが宣言してるようなものである。
米国の金融機関が破綻するとNYKダウは11,000ドルから6,000ドルぐらいまで下落するかもしれない。そうなると、米経済がまず破綻し、続いて、米国への輸出依存してる中国経済(既に今年に入って株価指数が半減してるが)も破綻する。そうなると全世界的な恐慌へと発展するであろう。
我々は、1929年に経験した世界的な金融恐慌と同じか、それを超える恐慌のスタートラインに既に立っているのである。恐慌まであと1年もつか、2年持つか、FRBの対応と、CDOの仕組みと連鎖がどの程度ひどい状況になっているかによるが、いづれにせよ、恐らく誰にも止められないであろう、カウントダウンはすでに始まっている。
副島氏は、今日本で一番世界経済が見えてる論客の一人である。サブプライム問題も数年前から指摘されており、エコノミストと呼ばれる学者に比べ、先見の明は数段高い。世界経済で何が起きてるかを理解するためにも、今是非とも一読してもらいたい本の一つである。